【Shuttle OMNINAS KD20】ジャンクエッセイ10

ついにジャンクエッセイも10回目。内容は記録と独り言ですが、、、それでも読んでくださる方には感謝感謝です。

10回目を飾る今回のジャンクは「Shuttle OMNINAS KD20」。ハードオフにて1100円ジャンク品だった。10年ほど前に発売された中華製のNASだ。Shuttle言えば、ベアボーン小型自作PCメーカとして有名なやつだ。その昔、自作PCにはまっていた少年(私)は、既にマザボも指定の冷却機構のあるこのメーカー製品を自作PCと呼んでいいのかわからなかったものだ。

して、今回はそのShuttle社が出していたNASのジャンクとなるわけだ。Shuttle社がNASを発売していたことも驚きなのだが、そもそもNASがハードオフにジャンクとして存在していることが珍しい。もっと言えばハードオフではジャンクでなくたってNASは中々売られていない。理由は色々考えられるが、あるとすれば、NASほど便利で価値あるものを、わざわざ格安で引き取られるハードオフに売るに来るほど無知な層がNASを利用していないという事だろうか。NASを売るならヤフオクとか。

この品はヤフオクでジャンクを買うにしても送料込みで1100円はオーバーするし、あまりにも珍しい代物だったので動作確認もせず買ってしまった。ダメで元々ってことで。

タグすらついていなかったのでジャンクである理由は不明だったが、一つはこの製品であるあるの蓋が閉まらなくなる、という事のようだ。この製品は前扉の固定機構の爪が割れやすく、すぐに半開き状態になってしまう。

当然ながらHDDは入っていない。この機種は2台までHDDの挿入が可能で、読み取りの最大容量は1機構につき4TBだ。10年前のものにしては十分だ。

ジャンク品なので当然電源のACアダプターは付属していなかった。裏の表示で電源を確認。

19Vの3.42Aだ。あとはこれに合うACアダプターを青箱から漁る。

結局、TOSHIBAのACアダプターにした。給電流量がすこし足らないが、あの数値はHDD2台入れて最大負荷時の値であるため恐らく十分。

余談であるが、こういう時のACアダプターは東芝が最強である。古くから電圧も電流もコネクタも変化してないため、どんなに最新で小型化されても安い。しかもこのコネクタと19Vという絶妙な値はほぼすべての海外製PC、周辺機器を司る。例えばDELLもPHILIPSもHPもモニタのコネクタがすべてこれで同電圧なので代用可能だ。かたやLenovo(IBM)やアップルとかサーフェスとか独自規格の電源コネクタを採用するやつ。ただ高くて替えも効かない製品はジャンカーとしては死んでほしい。

早速LANをつなぎ電源を入れ、リセットボタンを押した後にネットに公開されていた公式のマニュアル通りに手順を踏む。WEB画面からアクセスすると上のような画面になった。なんだ普通に動く。

HDDを入れるにしても、傷はないがよくみるとジャンクなだけあって汚い。せっかく動いたしこの際だからものすごく綺麗に掃除する。

日本語で唯一存在するKD22(KD20の後期型)のハック紹介サイトを元に分解をしてみる。

http://keepcreating.g2.xrea.com/PC/KD22.html

このブログによるとこの製品のほとんど各パーツは爪で固定されているため、分解は厄介とのこと。しかしサイトには既に爪の位置を示されていたのと、思いのほか素直な構造だったので結構簡単に分解できた。少なくとも一時(2006-10)の時代に売られていた富士通・NECのノートパソコンより遥かに優しく理にかなっていた。

分解を進めていくとファンの冷却機構がある割にはきれいだったので、ハードオフの店員がコンプか何かで一通りは埃を吹いてくれていたらしい。

だが完全に分解しての掃除は施されていないので、たまるところには溜まっている。こういうのを見ると分解してよかったって思う。

いかれた前扉のロック機構は爪で止まっているので簡単に取れる。もう使わないし邪魔なので取ってしまった。

こんな感じ。この穴に磁石とか入れられると扉の開け閉めに良いのだが、すぐ横にHDDが来るのでそれはとてもできない。マジックテープでも貼っておこうかしら。

せっかくなので基盤も解析してみる。赤で囲ったところにシリアルポートをみつけた。なるほどこれは改造ができる。尚、この後期型のKD22にはここにWi-Fiカードが来ているのでシリアルポートは廃止されたらしい。一般的なKD20とKD22の違いは有線か無線かという点だが、シリアルポートがなくなるのはジャンク屋にとっては痛い。

またSATAに出力する部分がPCI-Expressのx1に見える。もしそうならGPUとかほかのPCI-E基盤をのっけてLANアクセスか!とか考えたけどよく見ると基盤の切り込みが謎だったので独自回路のようだ。残念。

全部分解した。手洗いで気になるところの汚れを落とした後、全部食洗器に入れて清掃・乾燥。

組み立てなおし。おお!すごいきれいになった。

そんなかんやで作業していると、HDDが届いた。みんな大好き、信頼と安全、高品質のWDのHDD。今回は4TBのものを一つ購入。みんなも買おう。

ジャンクのくせに内部にマスキングテープで固定ネジも貼ってあった。

起動させWEB画面からアクセスするとこんな感じになった。ふた以外ジャンクじゃないじゃん。

いえ、違うんです。実はこれ、NAS特有のジャンク製品なんです。

2020年、SMB1.0はその古い技術とひどい脆弱性からWindows10のアップデートによりアクセスできなくなった。(※厳密にいうと設定すればアクセスできますが、脆弱性は据え置きです。)そしてこのNASは標準でプロトコルがSMB1.0であり、Shuttleはすでにソフトウェアのサポート、アップデートともにサービスを終了しているので、普通にNASとして使っているとある時急にアクセスできなくなる。

そういった背景からジャンクとして扱われたのでしょう。そしてその事実も対応策も知らない素人が使っていたからこそ、ハードオフに売られたのでしょう。そうに違いない。

この問題を回避すべく、OPENWRTでは公式にKD20のOSの書き換え手順を紹介している。

https://openwrt.org/toh/shuttle/kd20

この書き換えを行うと、Samba4.0まで適応が可能になる。(※SMBプロトコルでいえばSMB3.00まで) したがってまだまだ現役として使用可能になる。

となるとポテンシャルを秘めたまま公式にはジャンクになってしまうとは・・・諸行無常、ていうか商品サイクルだな。

して、上のサイトでは工場出荷状態になるファームウェアがDLできます。そのファイルをアップデートイメージとして書き換えを完了すると、SSHでアクセスが可能になる。シリアルポートを使わなくても大丈夫という便利仕様だ。

ここで大問題が発生。なんどSSHでIPをたたいてもアクセスできない。更新失敗か!?

しかし起動時のLEDの光り方が、HDDアクセス時や電源ボタンの反応から、ファームウェアの書き換え失敗によるものには見えない。。。困った。

結果的にIP迷子だった。自宅はYamahaのルーターを使用しているため、DHCPで割り振られたIPはリース時間が満了するまで表示されている。さらにファームウェアを書き換えるとMACアドレスまで変わるため、何がどこに割り振られたのかさっぱりわからず、前のIPばかり叩いていた。

さらに公式では (assuming KD20 is directly connected to eth0 on your host): とか書いているから余計IPって自明なものなのかと混乱した。というかダイレクトにつないでもIPもわからないしMACアドレスも変わってしまうのに公式はどうやって接続したのだろうか。謎謎謎だ。最終的にルーターを再起動させてNASのみ起動させて後、振られたIPにアクセスしたらつながった。この過程で1日つぶれた。

こんな感じでSSHからアクセスできる。そして更なる問題が起きる。

公式手順だと、wget https://downloads.openwrt.org/….と叩いてOpenWRTに書き換えろという。

だがこの状態でwgetをたたいても…-ash: wget: not foundとかでる。はて?とおもいaptで探しても同様。OpenWRTのパッケージ管理は異なることを知り、opkgでもまさかのだめ。。。BusyBoxだから?と思いHow to manage package in BusyBoxとググると

https://unix.stackexchange.com/questions/416715/package-manager-for-busybox

意訳:最小限のシステム構成だから、何かしたい場合はBusyBoxごと書き換えないとだめだよ!

だからそれを今したいんだよ!で1日費やした。結論は以下のとおりである。

scp openwrt-19.07.5-oxnas-ox820-shuttle_kd20* root@[XXX.XXX.XXX.XXX]:/tmp

…確かに先まで読まなかった私が悪いのかもしれない。でも普通パソコンを扱うものとしては、プログラム通り上から順番にやってみるでしょ!大体普段からwindowsしか使ってないのにピンとくるか!

説明サイトがあること自体は大層ありがたいのだが、ともかく色々と腹が立つ書き方だ。

ようやく書き換えが終わり、WEB画面アクセスが可能になる。

ここまでが妙に長かった。手順通りにパスワードと時刻を設定する。

ここでSambaのシステム構築でまたひと問題。公式では手順7Aに使用するSambaとしてksmbdなるものを推奨。だがこのksmbは文献が少なく、設定もままならない。またWindowsはNASの接続にID/PWを必ず聞いてくるので、ksmbはパスワードの設定方法すら不明なので役に立たない。

手順は7BでSamba 4 packagesを使ったほうが絶対いいぞ。文献も豊富だし。

https://hogepiyo.com/wiki/doku.php?id=openwrt:install-samba

※尚、Samba4では設定方法自体は上のサイトと同じだが、各ファイルの場所が微妙に異なるので注意(/etc/config/samba → /etc/config/samba4)とか。

あともう一つ注意事項として、このシステムではコマンドからの自動マウントが無効になっていた。のでHDDのマウントポイントはWeb画面から設定する必要がある。普通Linuxは逆が多いのに。無理やりマウントさせたらHDDが挙動不審になったので絶対やらないほうが良い。

最後に、ようやくNASとして機能するようになった。Windows10からも問題なくアクセスが可能だ。

いろいろブー垂れてきたが、珍しさ・経験・熱中度・利便性を考えると最高級のジャンク品だった。

残念ながらこういったハックしやすい製品は技術の向上とともに駆逐されつつあるので、今後こんなお宝に出会う事はないだろうな。

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3 thoughts on “【Shuttle OMNINAS KD20】ジャンクエッセイ10

  1. 先日MINI-ITXマザボ用NASケースを購入し部品はヤフオクで個々に調達して完成したので、Shttle KD20はお役御免となってこのあとOpenWRTでWindows10/Samba対応しようかとネットサーフィンしていたらKD20ネタでしかもごく最近の書き込みだったので夢中になって最後まで読ませてもらいました。ヤフオクでもこの品は不人気なため、ダメもとでOpenWRTとかでいじり倒そうかと。2年ほど前マザボが故障してメーカに修理してもらった年代物だし。
    まだなのでOpenWRTでは未確認ですが、ちなみにこのお品は標準ファームで8TB x 2本いけますよ(もちろん非公式)。ネットのカキコでできることを知って先日までその環境で使ってました。

  2. 今更ですが
    win11で設定 アプリの中からSMB1.0を有効にするチェックをつければ、ファームウェアアップデートせずともちゃんと繋がるようになります。
    初期設定で無効になっているのでwin10以降繋がらなくなってしまうようです。

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